徒然なる京都 令和洛中の記

京都のいろいろ 食・住・散歩 想うこと

即位礼正殿の儀 at 東京

今朝は、昨晩からの雨も上がり、朝6時過ぎには犬の散歩にちょうどよい秋晴れになる気配であった。すわ、今のうちに、と急いで家を出た。今日は御苑を通る賀茂川コースである。

 

京都御所を歩く。想えば、91年前の昭和3年には、この場所で昭和の即位大礼が執り行われていたのである。戦争がなく、帝国憲法下の登極令が廃されることがなければ、今、紫宸殿を中心とする京都御所周辺は、華やかな祝典の焦点地であっただろう。「即位の礼を行う期日に先立ち、天皇は神器を奉じ皇后とともに京都の皇宮に移る」、すなわち、即位式は京都で行うと定められていたからである。

烏丸通りにゴザを引いて、京都駅から発したろぼの列をお迎えした話を、当時女学生であったろう祖母から聞いたその無上の華やぎは今はどこにもない。「えらい変わりようや」と寂しそうにため息をついている本物の紫宸殿を左手に見ながら歩いていると、犬が糞をした。いつもここで用を足す不敬なワンコだが、洋犬だからだろうか?

紫宸殿と仙洞御所の間を歩いて東に歩を進めると、左手に京都迎賓館が遠目に入る。ここは、迎賓館が建つ前は饗宴グラウンドという野球場として市民に開放されていた。かつてよく遊んだこのグラウンドの”饗宴”という名前の由来は、昭和即位大典時に各国大公使、国内各界著名人士を迎えての数日間に及ぶ祝宴・宴会が開かれたことに由来するらしい。

昭和の即位礼は、昭和天皇の服喪期間を経て平成3年に行われた。今年は、さきの天皇上皇におなりになりご健在であることから、元年開催である。服喪期間に即位礼を行わないことも登極令の定めるところであり、これに倣ったのだろうか。それなら、京都での即位式も戦前を踏襲する選択肢はゼロではなかった。

平成の即位式にあたっては、確かそういう議論もあったと記憶するが、今回は東京でとり行われたという平成の実績が既にあるので、京都開催はこだわりの人士すら話題にしなかったようだ。京都での即位大典の体験者が(殆ど)鬼籍に入ったことも影響しているかもしれない。警備の問題もあり、空港が遠い京都での実施にはかなり難しい面もあるだろうが、知恵を使えば解決できない問題ではない。

私は京都で開催されればいいのになあ、と思っている派の人間である。近々に天皇継承のための皇室典範改正が行われるということであれば、是非あわせて即位儀式だけでも京都で開催することを議論してほしいものだ。

 

東京での即位式も無事終わり、クライマックスのときには、雨があがるどころか晴れ間から日が差し込み、虹がかかったことが話題になっていたが、京都はもっと早くからずっと快晴であったことを申し添えておこう。京都は本当にいい天気であった。

そして静かであった。